動画の値段と演奏の価値

配信する音楽コンテンツについて、
コンサートをそのまま配信する場合も、
あえて配信用に特化した
コンテンツを作る場合も
あるいはその中間で、
最近果敢にライヴハウスから
ジャズのミュージシャンの皆さんがトライしている
無観客配信のライヴという場合でも
いつも問題にされる話題、

それはそのコンテンツは

有料か??、無料か??

ということです。

僕自身、
6月にはもう発表になっているものも
実はまだ発表になっていないものも
何度かの配信コンサートを予定しています。

それらは、
視聴してくださるお客様のご好意で
ある程度の金額を気が向いたら投げ銭してしていただくもの、
完全な無料配信のもの、
いろいろさまざまです。


今後も、このように
時と場合によって
配信のコンテンツの対価は
流動的になるのではないかと思います。


無料配信ということに
否定的な意見もたくさんあります。

それはそうです、
畑で取れた野菜を、
定期的に買い取ってくださっている
流通業者
(音楽家にとってはコンサートホールやCD会社)
があるにもかかわらず、
畑の主、あるいは関係者が、
「ご自由にお持ちください」
と配っているということになるからです。

ただ、この場合も、
厳密にいうとコンサートホールさんにとっての無料配信と
CD製作会社さんにとっての無料配信は意味が異なります。

コンサートはこれまで、
あくまで直接同じ空間の空気を通して伝える音に対して
入場料という対価をいただいてきました。
ですからその一部始終を無料配信するのは
大きな意味においては、プロモーションとサービス、
と言えなくもありません。

ところが、
CDや録音物は、
クオリティはもちろん販売されているCDの方が
ずっと遥かにハイスペックですが、
生演奏ではない、記録されたもの、
ということでは、
配信用のコンテンツに極めて類似したカテゴリーです。

ですから
無料配信が
ダウンロードできてしまったり、
無期限に視聴できたりしてしまうものというのは、
ある意味、
CDなどの録音物の製作意図に抵触することがあるのです。


ところが、
現状では
ポップスなどでは
CDのプロモーションのために発売と同時に
1曲が丸ごと聴けるプロモーション動画がYouTubeにアップされたり、
古くなったアーカイヴ上のアルバムを
YouTubeに公開している場合があり、
これは広く音楽を普及させる、という
目に見える利益や数字では実現できない
大きな動きに即したアクションだと感じています。



先日からお話ししているように、
海外のクラシックやジャズのコンサートでも
オフィシャルで全体がまるまるYouTubeにアップされて
いつでも視聴できる、
というコンテンツはあまた存在します。

それらが一夜にして課金コンテンツになることは
ちょっと現実的に考えづらい状況ではないかと思います。


僕もこれまで、
有料であるコンテンツはどのような要素を
満たしているべきなのか、
ということを
ずっと考えていますが、
実際には
クオリティが高ければ有料、とか
時間が長ければ有料、とか言った基準は全く存在しません。



ここまで長々書いておきながら、
ものすごくこういう結論が出てしまうのは、
気が引けるというか、恐縮してしまうのですが、

僕は、これらの有料、無料という問題の現状唯一の解決策は、

『気にしないこと』

なのではないかと思っています。



というのは、

問題にされるより以前に、

無償の娯楽も芸術も存在しない、

ということを
実際にはほとんどの人が理解されている
のではないかと思うのです。



これはプロとかアマチュアという問題とも違う気がします。
初めはアマチュアで、無償で何かの行為を提供していても、
その技量が素晴らしければ
それが編み物であれ料理であれ、演奏であれ、美術であれ、
対価がつくようになる例がほとんどです。

その収入にのみ専従しているかどうかはそれぞれでしょうけど。

おそらく
演奏を観たり聴いたりする皆さんは
瞬時にそれが
ある種の専門的な技能で、
そこにはそれなりの対価が発生する、
ということを無意識に感知されているのではないかと信じます。
(おめでたい、と言われればそれまでですけど。)


あとはもう、
発信側がそれを
有料です、とか
今回は無料です、サービスです、
とか、
〜さんのおかげでミュージシャンのギャランティは充分まかなえておりますので
これは無料配信となります、
とか、
言い続けるしかありません。
特にスポンサーさんのクレジットは
これまで以上にしっかりするべきと思います。

それはスポンサーさんへの心遣いだけではなく、
その無料コンテンツが
有価事業であることをはっきりさせるからです。


そこで、
もう、ある種の自浄作用を信じつつ、
この有料無料問題を
大きく長く俯瞰しながら
音楽の配信コンテンツが発達する時代に突入し、
進化させてゆく過程にもっとも大事なこと、

それは
音楽家の皆さんが、
お金がもらえるご自身の価値をきちんと管理すること、
という若干、厳しい結論ではないかと思います。
これは自戒の意味も込めて言っております。



人前に出たくても、
誰かに見せたくても、
それが無償な行為である場合は
そのことがもたらす意味を常に深く考えましょう。

どのくらいのプロモーション効果があるのか、
それは社会にたいして客観的に判断して
自分が貢献できそうなことなのか、
自分にとって必要なことなのか。


僕もTwitterで短い動画を毎日アップして、
絶対に無料ではやってはいけない、
というご意見もいくつかいただきましたし、

それはとりわけ僕のことを大事に思ってくださっている方達からのものでしたので
それを耳にしながら続けるのは心苦しい部分もありましたが、

僕には
コロナ・ウィルス、外出制限、緊急事態、
コンサートの中止、という中で、
どのように社会のコミュニケーションが変化するのかが
ただ想像して見るだけでは理解しきれなかった、
という個人的な事情がありました。

そのために、お気づきのように
意図的に、自分の代表的なレパートリーに関してのものではなく、
皆さんのご感想が楽しみにできるような、
ちょっと変わったものばかり
あるいはギター学習者の皆さんの教材的なものばかり
弾いておりました。


緊急事態の期間中、日本のみならず
海外のコンサートホール、劇場、演奏家の皆さんも
多くの無料配信を行いましたし、
そのことの是否はともかく、
今後もそれらは続くと思います。

そんな中で、
僕が毎日アップする動画からいただく
皆さんからの反応やご声援には
とてもたくさんのものを学ばせていただきましたし、
今後の様々な可能性を思索するヒントにもなりました。


そして実はそれを通じて、
世界中の配信動画についても
かなり熟考することができました。


そしていただいた多くの反響の数々、
これらは多分
僕が生かせれば今後の残りの人生に
かけがえのない財産となるでしょう。
それを皆さんから対価として与えていただきました。

ですので、
無料配信のTwitterでしたが
僕は価値を見出していますし、
実際、
ちょっと現実的すぎることを言ってしまうと、
このTwitterがきっかけで
新しいお仕事もいただきました。


自分の考えが
果たして正当に機能したのかどうか、
これから判断していくしかありませんが、
配信に関して
少なくとも自主的な無料配信に対しては
音楽家の皆さんは
常に適度には
頭を悩ませるべきだと思います。

その上で、
よくわかんないからやっちゃえ!
っていうのは、
まあミュージシャンですから
ありですよね。
結果は悪くなるとは限りませんし、
自業自得ですので。


特に若いミュージシャンの皆さんは、
バブルの名残があった時期にデビューできた僕らに比べて
対価の保証されている発表の機会が極端に少なく、
その反面、圧倒的なテクノロジーの進歩によって
無償で自主的に何かを発表できてしまうツールに恵まれています。


音楽や動画のサブスクリプション化も
当然になった今日、
もちろん、昔のように全ての製作物が
それぞれの一つ一つの個体として
貨幣や通貨と天秤で測られる時代は終わっている、
というのは理解していますが、

だからこそ
自分の価値を自分でしっかりと見極め
あるいはそれを磨いてゆく、

ということが、
今、最大で精一杯の努力ができる部分ではないかと思いました。

そして無料の演奏動画も、
実際には無料でないことを
アピールしていきましょう 😅😅😅


































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