Four Paths of Light Part Iについて

最初の小節は3音/2音/4音のグループ
それぞれ [F-D♭-G][G-C][A♭-D♭-F-G]
からできています。

このそれぞれのグループを見ていくと、
[F-D♭-G]はD♭#11、
あるいは#11=#4というのはリディア旋法の特徴的な音ですので
このグループはD♭メジャー、
次の2音は
GとCで
CメジャーかCマイナー
いわゆる音楽の全ての基礎となる
5度と最もプレーンなC調のキーが予見されます。
次のA♭-D♭-F-Gは
D♭メジャーに#11が加わったもの。

ちなみに僕はこの和音は
武満さんの「森のなかで」の第1曲「ウェインスコット・ポンド」で
慣れ親しんでいて、
ギターがほんとうにほんとうに美しく鳴るハーモニーですよね。

あるいは第1小節3つのグループのベース音を追っていくと
FーGーAsとなっていて、
これはFマイナーに聴こえますし、
実際、小節全体も
FマイナーとD♭メジャーの中間の色彩になっています。

1小節目の音を全て並べて
Fマイナーの自然短音階
F-G-A♭-B♭-C-D♭-E♭-F
のB♭と
E♭がありませんが、
早速第2小節目でそれが補完されます。

3~4小節では上記のモティーフが少し増殖
この少し増殖、っていうのはこの曲の全体で起こる
細胞分裂のような現象で
デジタルな動機操作によって音楽が形作られる状況に
有機的な要素をプラスしていると思います。

さて5小節目ですが
ここは突然、この組曲「Four Paths of Light」全体の
もう一つの“親Key”であるBマイナーのフレーズです。

パットさんのスタジオ録音のアルバムではなく、
ライヴのDVDなどに長年親しんでいると、
⑤弦2フレットのH
④弦4フレットのF#
③弦開放弦
②弦3フレットのD
を押さえる
Bマイナー(add♭13)
というか、
Gメジャー7th/B
のようなコードが
パットさんのソロギターの世界を
象徴するコードの一つだということを知ります。

ジャック・ディジョネット、ハービー・ハンコック
デイヴ・ホランドとともに共演した
ライヴDVDの「シルバー・ホロウ」という曲のイントロの
パットさんのソロを聴いていただけるととても良くわかります。

5小節目の音列は
このBm(add♭13)のコードに9th=C#を追加したもので、
それまでのFマイナーあるいはD♭メジャーのモードから
一瞬外に出る区切りとなります。


ここで、
Fマイナー、Bマイナーのそれぞれの根音
FとBは増四度、つまりブルーノートを象徴する
フラット5th(さっき出てきた#4、#11)
の関係にあることに注目してください。

これまでの5小節に出てきた特徴的な音は
上記二つのキーのルートとなる
FとBの他に、
冒頭小節で提示された
D♭とGですね。
で、このD♭とGの関係も同じように#4でした。


さて6~11小節では少し違うことが起こります。

6小節は1小節目のバリエーションとも言えますが、
小節後半の音列は
Eメジャー(add#9)になっています。
メジャーコードの(add#9)というのは
結局メジャーコードを決定付ける長三度に
マイナーコードを決定づける短三度の音が混ざったもので
相当軋んだ感じの表現ですが
これも組曲の随所に登場します。


7小節目では6小節目の発展を受けて今度は
4つ目の音、A♭で書いてありますがこれは
前の小節でEメジャーのG#が鳴っているので次の音のBと組み合わさると
完全に前の小節の続きでEメジャーになるのかと思わせたら
実はそれはA♭だったのでGの音に下降してその中に
D,B,B♭が同居することにより
Gメジャー(add#9)が鳴るという仕掛け、
いやがおうにもエントロピーが増大しますので
ここにはクレッシェンドが書かれています。


続く9~11小説は
5小節で行ったBマイナーの提示ですが
10小節の終わりにF#メジャーを加えることによって
よりBマイナーコードへの重力を高めています。

12~22小説は1~11小節の繰り返し
次に
ソナタ形式でいうところの第2主題の部分へとつながります。

2021/6/18
(続く)


22小節の和音は明らかにG7
ここでは♭9thと#11thを含む
オルタード・スケール系の響きになっています。


ここで大きな構成を考えます。

24小節から49小節、50小節から79小節はそれぞれ
103小節から130小節、131小節から160小節
に対応する部分です。

これをどうして24~79小節と
103~160小節、という風に考えたくないかというと、
後ろの29小節間はそれぞれほぼきちんと対応する移調から発展した
再現であるのに対し、
前のグループは微妙な違いがしばしば起こってくるのです。

何を言ってるかわからないと思いますので
細かく順番に見ていきましょうね。


24小節Aハーフディミニッシュのコードですが
これは前の小節がG7ですしその後の展開の予兆ということで
Cm6だと思っていてもいいと思います。
それが次の小節ではAがA♭へ下がって
Cm(add♭13th)のようなコードになります。

26~29小節の中ほどまでは
Cmの中で7thのB♭から6thのA、♭13thのA♭、という風に
ベースが下降してまた上昇してくるというふうに解釈しています。

29小節の最後の4つの音がG7オーギュメントの役割を果たし、
ついに30小節からは少しメロウでセンティメンタルなパートが始まります。

ここからの展開は
狭い音域の中にこれほどのバラエティーのハーモニーを
しかも開放弦を多用しながら展開できるのか!!
という驚きに圧倒されるパートだと思います。

カッコよすぎです。

まず30小節は、
さっきからそんな気がしていたCmの和音がはっきりと打ち出され、
続く31~34小節は
B♭m7、F(add9th)、Fm(add9th)、再びG7オーギュメント
35小節に2/4拍子の切り返しが入ると
36では急に視界がひらけたように
Cメジャー(add9th)です。
このコードの光り輝き感はとても大切で、
それも束の間、
まるで一瞬差し込んだ太陽の光が
即座に雲に覆われるように
3/8拍子の切り返しから
Fメジャー(38小節)、Fマイナー(39小節)、
40小節ではG6、
41小節はE7th(♭9th)
42小節はA7となって、
43小節はF#sus4系が最後の1音でF#9thになり、
44小節でBm、Bm/C#みたいになって
45小節のこの謎の感じはB7th系になったのかと思いきや
むしろE♭メジャー7th(add9)のような感じになってます。

ただ、この44~46小節の展開は
多分にサウンドと手の動きの
“気持ち良さ”の感じられるパートですし、
後半の再現部では違う展開になって和声進行も拡大されることになるので
この辺りのコードの動きは
分析して暗譜の助けにするくらいに留めておくのが良いでしょう。


46小節ははっきりC7thからFのカデンツが聞こえ、
47小節は冒頭主題に含まれていたD♭メジャー(add#11th)、
そして48~49はG7♭9th。



後半との対応をしながらとは言え、
まだいわゆる第2主題の提示部が終わっていないのに
こういうことを言うと先走った話になってしまいますが、
この、
ハーモニーの進行が再び現れたときにちょっと変わっていたり、
パッと見そう見えないのにきちんと理論立てられた和声進行が隠されている
この感じ、これは!!

そう、バッハの無伴奏チェロ組曲に似ています。

僕はよく、
バッハの勉強をするときに、
チェリストの鈴木秀美さんが楽譜と解説を書かれている本を
ネタ本にして、
そこに鈴木さんが分析されている隠された低音や和声の進行を
全部ギターで同時に弾いてみたりしているのですが、
その鈴木さんの解説に上の↑24小節以降の解説は
解説の仕方まで真似したみたいになってしまってます 😅


音楽に起きていることが少し通じ合っているからでしょうか....

さて、まだまだ第2主題の前半が終わったところ、
次回はその後半です。


2021/6/24更新
(続く)



50小節目からは
131小節以降と対応する部分です。

ここはEmM7th(add#11)
のようなコードで始まります。
52小節目はA#をB♭表記にしていますが
ほぼ同じコードの展開形と感じて良いでしょう。

ここにきて一段テンションが上がった感じになるのは、
その前の49小節がG7系で通常はCまたはCM7に解決すべきところ、
3度高い近親コードのEマイナーにトランスしたためです。

55~56小節はその補完的にCadd♭9とD♭M7#11のようなハーモニー。

60小節はなんでしょう...
EM7#9とF#7#9が合体したような、
それでいて少しA7も感じさせるアルペッジョ。

61小節からのリフに使われている音は
この曲の冒頭の5音と同一です。

76小節からの動きは
157小節から転調して再登場する部分ですが
77小節はB♭m系というよりは
76小節からの総体でGのオルタードスケールのようなものの
分散和音、と考えると、
78小節がCメジャーに解決する意味がありますね。

即座にそれは全音上に移動しDメジャーから
D♭に降下します。

このセクションは、ここではこの後主題に戻っていきますし、
131~160小節の部分はもっとも複雑なフォルテの部分へとつながりますので
構成上、‘大きなドミナント’のような役割を果たしています。



さあ、80小節目からは冒頭主題の回帰です。
が、この回は③弦の開放弦と①弦がセットになります。

これは大きく捉えると
Gのペダルの他にEのペダルも聴こえることで
91小節からのAmへの転調をスムーズにさせるのと、
単純に盛り上がる効果がありますね。

転調後は
96~97小節、100~101小節が厳密に移調フレーズではないことを除けば
概ね冒頭主題を踏襲しています。
この辺りから、
一度提示した主題を転調させるだけというよりは
それをもとに新たにギターをサウンドさせるポイントを
探していく、という感じの書き方なので、
弦の響きの良い和音への変更があります。


102小節でE7♭9#11に着地。

103小節からは24小節から登場した
少しメロウで叙情的な第2主題とも言える部分のリプライズで
やはり転調していますが、
冒頭主題がFマイナー(D♭メジャー)からAマイナー (Fメジャー)に3度上に転調したのに対し、
この部分は
CマイナーだったものがAマイナー、つまり3度下に転調しています。


ハーモニーの進行は概ね一緒ですが、
例えば
24~25小節の進行と38~39小節では
Aハーフディミニッシュ、A♭M7#11がFadd9/A、Fmadd9に
微妙に変化していたのに対し、
対応する
103~104小節と117~118小節では
103小節と117小節が同じハーモニー、
Dadd9/F#になっています。
続く小節は微妙に変わっていて
どちらもDmadd9/Fのように見えて
104小節はどうもDmだと6thが入っているので、
実はFM7#11なので、
この二つのコードには
103~104小節はF#ハーフデミニッシュ的なものとFM7#11
116~117小節はDadd9/F#とDmadd9/Fということなのでしょう。


119小節からは、
40 小節からに対応する部分で、
ハーモニーも3度下のAメジャーから始まるのですが、
拍子の拍数や和静の推移にそれぞれ微妙な違いが出てきて
より活発で開放的な展開を見せた後に
128小節からのE7♭9/G#になります。


131小節からは前述したように
50小節からの部分に相当するところですが、
先ほど50小節は

EmM7th(add#11)

だと書きましたが、
ではここは

AmM7th(add#11)
なのかというと、
確かに音はそうなのですが、

書き方が

A♭/A

なのです。

そう思って50小節
を振り返ると、
確かに50小節のハーモニーも

E♭/E

なのですね。

こういう騙し絵のような感じが
この曲の面白いところなのです。
冒頭のコードが二重の意味づけにとれてしまうところなんかも
そうだと思います。



2021/7/15更新


131小節からのセクション、
対応する50小節からのパートでは
リピートよう切り返しのフレーズ60小節と75小節は同じなのに対し、
対応する141小節と156小節は微妙に違います。

これは161小節からのペダルがEなこともあって、
そこに寄せていく意味でBの音に求心性を持たせる結果になっていますね。

161小節からのフレーズは
冒頭主題のバリエーションですが明らかにEマイナーなのと
いろいろな要素がコラージュされていて少し狂乱状態になりつつあるところです。
166小節ではそれがAマイナー(あるいはAメジャー)に転調して
さらに一段階テンションが上がります。

171小節からのパート、
実は先日この作品を録音してCDリリースした
岡本拓也さんに聞いたのですが
GFAコンクールの課題曲として
この楽章が発表されたときは
これ以降の部分が曲の冒頭にも付いていたそうなんですね。

岡ちゃんCDはこちら↓
IMG_6437.jpg


そうすると主題になる部分が出てくるまでに①弦の連打があったわけで、
組曲になった時にそれがどうしてなくなったのかわかりませんが、
この組曲の第4楽章が、
mとiの二本指のトレモロで、
最後①弦の開放弦とともに消え入るように終わっていくことを考えると
コンクールの課題曲時のように始まるのも乙ですね。

ここの部分のリズム構造は3と4のせめぎ合いになっていて、
174小節など4/5になっていますがここは明らかに6/8+4/8ですよね。
179小説もそれまでの4拍子が6/4にシフトするために4/8+3/8になっていると考えています。

そうすると188〜189小節というのは、
4/8が大きく3回あった後に3/8がくっついていて、
190~191小節は6/8+9/8というふうに解釈できます。


195小節からはさらにコーダ的な部分ですが
同じ7/4拍子でも196小節と198小節では譜割が違えて書いてあるのは
意図的ではないかと思います。
ここでも、前の小節の拍感を受けた上でそれが次の小節の拍感へと
受け渡されるようになっているのではないでしょうか。



この作品ではこの後続く
第2楽章と第3楽章は同じハーモニー動機の展開を扱っています。
そして第4楽章は第2楽章の回想になるのですが、
第1楽章の一番最初に出てくる

F-D♭-Gという和音は、
第3楽章の247小節などにもはっきりと素材として現れていますので、
もっと随所に全体の統一を図る鍵を発見できそうですね。
見れば見るほど新たな発見がある作品だと思います。

皆さんぜひチャレンジしてみてください!!!






























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