僕はなんで基礎練習ばかりし続けているのか(若いギタリストさんたちや愛好家の皆さんにもむけて)

今日は僕の基礎練習のことを書きます。

はじめに、これは自分に課しているルーティン・ワークというだけで
誰もが同じだけやらなくてはいけないものではありません。
僕より練習量が少なくて、僕より達者に弾ける人はたくさんいます。
と、同時に、
昨今の若手の皆さんの雑誌などでのインタビューを真に受けるとすると、
昔のギタリストはもっとたくさん基礎練習をしていました、
と言わざるを得ません。
ギターを演奏するテクノロジーは遥かに進化しましたし、
楽器も格段に弾きやすく鳴りやすくなっていますから、
昔のような練習は必要がないのかもしれません。

ではなぜ僕が基礎練習をし続けるかというと、
やはり昔のギタリストの様式に、
より強い憧れを感じるからです。

93年にイタリアで聴いたアリリオ・ディアスは、
70歳を超えながら、ジュリアーニの第3番の、
本来ならテルツ・ギターという、通常より3度高いギターで弾くコンチェルトを
3度高くチューニングしたギターで、
物凄い速度で完璧に弾いていました。
アンドレス・セゴビアの絶頂期は60代でしたし、
ナルシソ・イエペスも最晩年まで研鑽を積んで変化し続けていました。

今現在、僕より若い世代のギタリストが
そのくらいの年齢になってどうなるかわからないので
何も断言はできませんが、
あのパコ・デ・ルシアでさえ、晩年まで練習している様子が
息子さんの撮った記録映画の中で見られますよね。


基礎練習より曲の練習に時間をかけるべきだという意見もあります。
曲から難しい場所を抽出して基礎練習に役立てることもできます。

しかしながら
スケールやタッチ、左手の動きの正確さ、そして脱力と
単純なことに秀でていれば、
演奏は格段によく聴こえるようになります。

僕はそこで、思い出すことがあります。
確か2013年くらいでしたでしょうか。
アイス・ダンス・ショーを観に行った時、
プロのスケーターや、オリンピック・メダリストたちの中で
突出してスケーティングが美しい出演者の方がいらしたのです。
彼女はただ滑っているだけでちょっと尋常ではない美しさだったのです。
もう選手ではなく、競技活動から離れて久しく、プロ活動されていましたし、
大きな技を派手に決めていた、という印象よりも
とにかく、ただ滑っていく時の美しさが未だ観たことのない奇跡のような状態。
テレビで観るより、余計に強くそのことが感じられました。


やはり、演奏家であるからには、
それぞれの人が持っている技量の美しさや
音色の素晴らしさを伝えたいもの。

ですから、その人が弾いたら
何を弾いたって美しい、という
サウンドの高級感、というか、スペシャルさを突き詰めるのが
僕の基礎練習の目的です。


まず、その日の最初に、
フリオ・サグレラス(Julio Sagreras)の
「Tecnica Superior de Guitarra」
という本の最後に載っている
Ejercicios Tecnicos
という練習の中のNo.3~5,9~11を弾きます。

次にセゴビアのスケール。
これはma,ia,imなど組み合わせを変えて弾きます。

次にルイジ・ビスカルディ(Luigi Biscaldi)の
「Esercizi Speciali di Virtuosisimo」という本の第1巻の
最後に載っている、
右指を3本使うスケールを弾きます。
これは1本の弦を3本の指で3回ずつ打弦できるように
左手の運指を決めたもので、
たいへん有用性があります。
本にはamiで弾け、と書いてありますが、汎用性がないため、
最初の6音をpiのフィゲタ、
次からmipで上り、最後①弦にきたらami、
下りはamiのみと②または③弦からpmiに移行するものを
気分によって変えてさらいます。

その後、ヴィラ・ロボスのエチュードの
No.1、2、4、12(時々10,11)くらいを弾いて
バリオスの演奏会練習曲第1番、練習曲イ長調(第2番)
バリオス編のコストのエチュード、
アラールの練習曲、ソルの練習曲Op.6-6
サグレラスの蜂雀、
などを弾きます。

今だいたいこれに急いでるときは45分、時間があるときは1時間半くらいかけていて
本当は体力があれば毎日ヴィラ=ロボスのエチュードを全部弾くのが理想ですが
それはまだできていません。



なぜスケールを何種類も練習するかというと、
セゴビア編や、通常の教本に載っている音階をmi,im,iaなど2本の指で打弦し続ける
いわゆるピカードという奏法は、スピードと圧力は出るのですが、
物心つかないうちからずっとギターを弾いてきているような
ものすごい巨匠でも、たまに全然当たらなかったりする、
というのをコンサートで何度も拝見しているので、
30歳過ぎてから基礎練習をあれこれ考えるようになった自分が
とてもそのレベルにいくわけがないと思い、
まったく新しいシステムを探したのです。
なのでケース・バイ・ケースで併用しています。


先日、共演したチェリストの方が
曲の中で上昇のスケールを演奏すると、
まるで大輪の花が開くのを観ているような
心踊る夢見心地にこちらをさせてくれるのです。

願わくばああいうふうになれたらなぁ、、と思います。


特に若いギタリストの皆さん、
今、とてもたいへんな時期を過ごされていると思います。
これまでのように、演奏会やコンクールが練習のゴールではなくなってしまいました。
でも芸術っていうのは、
本来、人が、長い長い時間をかけて開発した技倆を駆使して
想像もつかないファンタジーを具現化して見せることなのです。
それは美術でも文学でもスポーツでも変わりません。
フレッド・アステアのダンスを観てみてください。

YouTubeを観たらすぐ真似できるものは芸術ではありません。
今こそが、真のクオリティーを獲得するチャンスかも知れません。


僕も一生懸命考えて頑張ります。
























































この記事へのコメント

とあるベーシスト
2020年04月19日 09:41
ありがとうございました。基礎練習頑張ります。
2017グリム
2020年04月22日 16:27
カジモトyoutubuのイメージが本来の想像していたイメージに戻り安心しました。絶え間ぬ努力をプロの方もされてることを知れ自分も一生勉強しようと心に決めました。しかしお話の面白さをもっと仕事に取り入れても良いのかもしれません。TVの音楽番組を持っていただきたいほどの魅力がありました。題名のない音楽会の席狙ってください!