3/2ギター文化館のリサイタルのプログラム

ギター文化会館さんのご厚意により
当日配布するものと同じ内容を掲載します。

アルベニス:スペインの歌 OP.232
前奏曲(アストゥリアス)/オリエンタル/椰子の木陰/
コルドバ/セギディーリャ

アルベニスの組曲の一つ、「スペインの歌Op.232」には
ギター好きに馴染み深い曲が顔を連ねています。

とはいえ、
そのうちの「椰子の木陰」「コルドバ」「セギディーリャ」は
リョベートやプジョールによる二重奏の編曲が有名で、
(コルドバだけはそうでもないかもしれませんが)
長らく独奏では演奏されにくかったものです。

ギターのコンサートの定番、ギターといえばこの曲と言えるものの一つである
「アストゥリアス」として有名な「前奏曲」、
ご存知の通り、空席だった〈スペイン組曲〉の「アストゥリアス」の
席にあてがわれた曲です。
アストリア地方とはほぼ正反対の
スペイン南部特有のエキゾティシズムに彩られた曲想は、
まるで「津軽」という名前で有名になった沖縄民謡のよう??
といえなくもありません。


続く「オリエンタル」はリョベートの編曲が早くから知られていましたが、
再作曲とも言える大胆な声部の入れ替えや簡略化は、
まさに創造的であるにも関わらず、
レパートリーとして定着するには少し抵抗が大きかったようです。
今回は、リョベート氏に敬意を評しつつも、
他の曲をそこまで創造的に再構築するのが不可能である、
という見地から、かなり原曲に近づけたものとしました。


「椰子の木陰」もリョベート編の二重奏版が有名です。
ハバネラのリズムに乗って、
タイトルそのままの光景を思い浮かべるような甘美な楽想が続きます。


「コルドバ」にはリョベートとガルシア・フォルテアに早い編曲の例が見られますが、
この曲を独奏曲として有名にしたのはなんといってもかの
ジョン・ウィリアムズでしょう。
この曲には作曲者によって、次のような詩が添えられています。

「静かな夜、ジャスミンの香りをのせた芳しいそよ風を遮って、
セレナードの伴奏をするグスラの音がする。
それは、時に情熱的に、そして時に高い空に揺れている椰子のように、
とても甘い音で響く」

グスラという東方起源の楽器が登場するように、
また、イスラムのモスクをキリスト寺院に改築した聖堂が有名なコルドバであるだけに、
この曲は思いの他、中東風であるのかもしれず、
プジョールによる二重奏版などにはその片鱗が感じ取れます。


「セギディーリャス」は、
やはり〈スペイン組曲〉の「カスティーリャ」に転用された作品。
目まぐるしく転調する中間部はギターにとっては至難の技ですが、
このリズム特有の軽やかさをもっとも表現できるのもギターの特徴です。



スカルラッティ:ソナタ K.208/209/K.380

後半は3つのスカルラッティのソナタから。
留学時代に僕の先生だったエリオット・フィスク先生は
スカルラッティのソナタの編纂者として名高い
ラルフ・カークパトリック氏の薫陶を受けており、
その超絶な技術で70曲以上のレパートリーを持っておられました。
今日は、比較的昔からギター曲としておなじみのものを選びました。
スカルラッティが、愛弟子、王妃マリア・バルバラのために書いた
550曲以上もの手紙のほんの数曲ですが、
王妃と同世代の非常に年の離れた妻を王妃の結婚と同時期に迎えた、
つまり色々と勘ぐれてしまいそうなスカルラッティ氏の
愛情のひとひらを感じていただければ。


ドビュッシー : 月の光

僕はこの曲を以前からフランシス・クレンジャンス編で弾いていたのですが、
ある時、マネージャーからの「大介さんが編曲したらどうなるんですか?」
の一言にはっとして編曲したのが今回演奏するバージョンです。
ちなみに「月の光」は、サインス・デ・ラ・マーサ、カルロス・バルボサ=リマ、
アンヘル・ロメロ、と、他にも多くの編曲が存在しています。
僕の編曲の特徴は、あえていうと「音域の狭さ」でしょうか。
低音を下げたチューニングや、速いパートでのオクターヴ・ハーモニクスを全て無くし、
ギターが自然に鳴る範囲に響きを集めました。


武満徹 : めぐりあい/○と△の歌/燃える秋/波の盆

1997年に武満さんの作品集のCDをリリースした折から、
武満さんの「ソングス」や映画音楽をギターに編曲したいという願いを持っていました。
しかしながら、
武満さんというのは、
ご自身では日本的な伝統を感じさせる格調高い創作料理のお店しか経営していないのに、
他店にシェフとして招かれると(つまり映画音楽などの現場では)
ハンバーガー、パエーリャ、ピザ、シュラスコ、ムケッカ、クスクス、
なんでも作れてしまった人でした。
わかりやすくいうと、
彼の映画音楽のスコアには
ジャズが、タンゴが、フォルクローレが、ありとあらゆる音楽が、
真似事ではなくかなり本格的なプレゼンテーションで詰まっていたのです。

そうなってくると、
それらを編曲するには、少なくともそのような音楽への一通りの理解が求められるでしょう。

そのように思ってから早いもので20年、
随分時間は過ぎてしまいましたが、幸いにも
武満さんのオーケストラ・スコアや音楽を自然な形で
ギターにアジャストできるようになってきました。
(2021年の出版をめざしています。)


ジョビン:ディサフィナード/イパネマの娘

この二曲は2003年頃に最初に編曲したものですが、
最近になって、ようやく自分が演奏するスタイルが定着してきたように思います。
ジョビンの音楽の素晴らしさでもっとも顕著なのは
ハーモニーの移ろいです。
ギターにとって、そのようなハーモニーの表現が可能であるとするならば、
ヴィラ=ロボスに始まってジョアン・ジルベルトに至る、
あるいはその先もギンガなどを通過して連綿と続く
ハーモニーとフレットボードの魔法、
のようなものへのこだわりを追い求め続けることでしょうか??



ピアソラ:アディオス・ノニーノへのイントロダクション/リベルタンゴ

1969年にピアソラが「アディオス・ノニーノ」を再録音した際、
キンテートに加わったのがピアニストのダンテ・アミカレッリ。
なんでも初見ですらすらと演奏してしまうアミカレッリに憤ったピアソラが、
これでもか!! と書いたのがこの有名なカデンツァです。
それでもすらすら弾いてしまったそうですが・・・
僕はこのカデンツァを、ピアソラももっとも認めていたバンドネオン奏者レオポルド・フェデリコが
バンドネオンの独奏で演奏するのを聞いて、
この編曲を思い立ちました。

「リベルタンゴ」は、
これまで様々な形で関わってきた曲ですが、
本当に奇跡としか言いようのないくらい、
シンプルで充足した作品ですね。
独奏で弾く気が起きるには数年の歳月を要し
またさらに編曲が決定するまでも数年の歳月がかかりましたが、
現在の編曲はとても気に入っております。





























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