現実逃避のグラン・ソロOp.14

尾尻さん編曲の、
現代ギター社から出版されている
ヘンデルの組曲を練習していると、
6小節くらいずーっと
12フレットより上を弾いている場所があって、
新年早々、
まったく鍵かっこのない物語を
50ページくらい読まされているような
脳みそ麻痺になっております。

息抜き、
と称して
まったくプログラムとは関係のない曲を
さらい始める現実逃避癖も
ほんとうに困ったもので、

今朝は順に、
ソルの「グラン・ソロOp.14」
ジュリアーニの「大序曲」「ソナタ・エロイカ」
と、完全に趣味に走ってしまいました。

なかでも、
時々習いに来る学生さんの多い
「グラン・ソロ」
という曲には、
版がいくつもあり、
いったいどれで弾いたものやら考えもので、

演奏会のプログラムが多すぎて
まったく身動きの取れない今のような時期にこそ、

ついつい人はその懸案を
解決しようとつとめてしまうのです。


さて「グラン・ソロ」。

最初に印刷されたのは
カストロ版と呼ばれるもので、
これは従来の版よりも低音が多くかかれ、
エリオット・フィスクが言っているように、
あたかも6弦がEで7弦がDの
多弦ギターのために書かれているかのよう、
なのです。

次のユージェル版、と言われるもの、
これが現在の標準版となっていて、
多くの人がこれで演奏しています。

一方、セゴビアが演奏しているものの元となっているのは
ジムロック版といって、
短い展開部がさらに半分くらいになっており、
DメジャーからD♭メジャーへ、という、
斬新な衝撃の転調がないのが残念です。
よって最近は、
これで弾く人はあまり見かけません。

もっとも、僕が子供の頃はこれしかなくて、
僕も最初はこれで弾きました。
これをもう少しセゴビア風に校訂した
不思議な譜面だったような記憶が。

エリオット・フィスクは、
原典版(ユージェル版)で弾くと、
どうしてもセゴビアの演奏で
「グラン・ソロ」を初めて聴いて感動した時のような
カタルシスがない、という理由からか、
自分でアレンジしたものを出版していて、
これで弾く人も出てきたりしたら面白いですね。

そしてもうひとつ(!!)
忘れてはならないのがアグアド編。

これはソルの友人であったアグアドが
弟子のために編曲したものです。
装飾音やアーティキュレーションが詳細で、
きらびやかな印象。
バルエコや福田先生はこの版で弾いています。

この版はたいへん考え抜かれていて
とても面白いです。

アグアドの使用していたギターが、
当時としては少し大きめの
現代のギターに近いものだったことや、
アグアドの奏法が現代のギター奏法の
もとになっていることを考えると、
現代のギターにとても良くあっています。


ソルのユージェル版の問題点、というのは、
ソル自身がフィゲタと言って現代のギター奏法よりむしろ
リュートなどの弾き方に近いような、
それでいて音響効果は抜群であったであろう
シンフォニックな奏法を用いていて、
ユージェル版の「グラン・ソロ」は
その奏法においてもっとも効果を発揮するであろう、
ということです。

ですから、現代の楽器と奏法で演奏したとき、
僕には若干間延びしたような感じに聴こえます。

アグアド編は、
そこを解決するとても良い考え方なのですが、
同時に、
アグアドが精緻なギターサウンドを指向するあまり、
ソルの原曲の持っていたダイナミズムが若干平板な印象になり、
アグアドもそのことを知っていてか、
ソルがフォルテを指定したところを
あえて弱く弾くように指示したりしているようです。
最後も消えていく感じで終わってます。

結局
全部の版が長短あり、
このことが
有名でみんな弾く曲の割に
録音が少ない要因になっているのではないでしょうか。


で、
今朝、全部の版を何となく見直していて、
ジュリアン・ブリームが録音でやったように、
それぞれのいいとこ取りで弾くのが一番なんでは!?
という気がしてきたので、

ブリームの弾いている
ユージェル版にアグアド編をミックスし、
さらにブリーム味、なところを、
少しユージェル版に忠実に戻したものを弾いてみたら、
これが意外と気持ちがよかったのです。

気持ちがよくてさらってしまった。


・・・・。


あれ・・・・・・(- -;)

演奏会の練習が・・・・・・。。。。。


ほんとうに困ったものです、自分の性格。。。


この記事へのコメント

山下高博
2014年01月07日 15:57
あけましておめでとうございます。
なかなか面白いブログですね。機知に富んだ内容でありながら、思わず笑ってしまう面白さに感激しました。また時々読ませていただきますね。今年もよろしくお願いいたします。
ミューズ音楽館山下
天空仙人
2014年01月08日 22:11
グラン ソロにそんな版が沢山あるとは知りませんでした。
中級者でも弾ける「鱒」のメヌエット書いていただけませんか~?G社の巻末付録になったら最高。

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