ギタリスト 鈴木大介のブログ

アクセスカウンタ

zoom RSS 部屋のなかにも宇宙

<<   作成日時 : 2013/05/20 01:18   >>

トラックバック 0 / コメント 1

バラケ・シソコさんのコラという
アフリカの民族楽器を聴きに横浜へ。

コラというのはひょうたんの(たぶん底?なんでしょうか)
半球のボディに牛の皮を張り、
ローズウッドのネックを取り付け
弦を張ったハープのようなアフリカの民族楽器。


昔、フォディ・ムサ・スソという人が
このコラを演奏して
ハービー・ハンコックと一緒に
「ビレッジ・ライフ」というアルバムを制作していて
僕はそれが大好きだったので
興味津々でした。


今日はバラケ・シソコさんひとりの、
ソロ・リサイタルとでもいうのか、
彼のオリジナル曲を完全にコラのソロで聴きました。


わずかな例外をのぞいて、
コラは僕たちが言うところのFメジャーに調律され、
FとCの低音をドローンにしながら、
メリスマのような装飾音の入ったフレーズが紡がれてゆきます。


音は美しいし、技術も素晴らしいし、
それだけでも大満足なんですが、
数曲聴き進むうち、
ちょっとトランス状態になったのでしょうか、
僕の頭の中で、
いろいろなことが思い出されてきました。


ひとつひとつの曲が、
ほぼ同じ調弦で、同じドローンの上に演奏されていても、
どうもメロディーの中心音が違っていたり、
音が増えて来たときに、
信じられないような複雑なクロス・リズムが生まれたり、
バラエティーの広い宇宙があるのです。

ギタリストのジョン・ウィリアムスが、

「西欧の音楽が優れているのは
ハーモニーの技術だけだ。
メロディーの歌い方や、リズムの多様さ、
アフリカやアジアの音楽の方が優れている点が
たくさんあるんだよ」

と言っていたのを思い出しました。


たしかに、
聴いているうちに
伴奏、というか、低音のF音とC音は、
その本来の音程を離れて、
太鼓のように聴こえてくる気がしてきました。


先日聴いたジャック・ディジョネットのドラムには、
繊細にピアノと呼応する音程、というか、ピッチがあったけど、
その逆、というか、それと同じというか、
FとCの音が、
ピッチの束縛から開放されて、もっと広くて大きなフィールドを
形作っているのでした。


たしか、6曲目でしたか、

そのドローンの上に、
Aの音を中心にしたスケールによるメロディーが
展開される曲があったんです。

Bは♭ですから、ジャズ的に言うと、
Aのフリギアン・モードが、
FとCのベース上で歌われます。

ギターでいうとオープン・チューニングですから
(ハープなんだから当たり前か)
合いの手に入るE/B♭の増音程や、F/Cの完全4度が
音程が純粋に調和してとても心地よいし、
さっきから低音はピッチを超えて太鼓に聴こえているので、
僕はそこに、
ほんとうに自由なハーモニーの移ろいを聴いて
まるで耳が開いていくような体験をしました。


これは、なんだろう、
いろんなお酒を飲み続けて、いろいろな味を知っているはずなのに、
ある時訪れたヒマラヤで湧き出ている水を飲んだら
そのあまりの美味しさに陶然としてしまい、
世の中の飲み物のすべての味を同時にその水に感じ、
そのどれもが満たせない空白をその水が満たしてゆくのを知った!?みたいな、
まあもう、ヒマラヤなんか言ったことないので
そうとういい加減ですが、そんな感じなんです。


そこでまた思い出しました。

昨年、
西村朗さんの新作協奏曲を練習していたときのこと。


僕は、フレット・ボード上を
半音ずつシフトするコードが開放弦と混ざりあって生み出す音の綾を
どうやって聴き、どのように歌いだすべきか、
悩んでました。


たとえギターでは演奏がさほど難しくない
半音シフトのオープン・コードでも、
純粋にソルフェージュしたら、ものすごく複雑な音列ですし、
かりにそれを歌ったり、ピアノで弾くのはかなり困難なはずです。

僕自身の問題として、
ギターの機能に即した手なぐさみのようにではなく、
一度、ソルフェージュして頭の中で構築したものを
開放弦をともなう容易な運指で(とはいえ簡単なのは左手だけですが。)
弾いたのでなければ、
その新作コンチェルトの美しさを表現しきれないのではないかと
思ったんです。


で、休みがてら、
アフリカのミュージシャン、フランシス・ベベイの弾く
ソロ・ギターを聴いていたら、
なんと、
ベベイの弾くギターにもたくさん開放弦のドローンがでてくるのですが、
それが、EとかAとかDとか、
要するにギターギターしたミラレソシミから開放されて
とても風通しの良い、
リズムとハーモニーの背景を形作り、
やはりクロマティックに平行移動する高音の移り変わりが、
とても美しく激しく、艶かしいハーモニーのグラデーションになって
聴こえて来たのでした!!


話がだいぶと脱線しましたけど、

バラケさんのコラも、
ピッチという意味での音階は特定されていますが、
そこには無限に近いハーモニーが聴こえてきます。

これにはほんとうに驚きました。

そういえば、こういうことがあるんだよな、
というのを思い出させられて、
がーん、と来ました。

その曲(6曲目?)は
最後の方でCを基音とした明るい調に転じましたが、
スローダウンして、終わりの和音がつま弾かれると、
それは素晴らしく純度の高いAマイナーのコードでした。


もしかしたら、
バラケさんの音楽を、
音名やコードの名前で記憶にとどめるのは、
本質から離れてしまう愚行なのかもしれません。

でも、
僕たち日本人は、
やはり子供の頃から、
もはや西洋音楽のピッチとルールをもって
音楽に接しているわけなのです。


むしろ、
そのように西洋化された耳でもって、
いかに古来から自分たちのものであったはずの
言語とも言うべき
日本の音楽の表現を実現してゆくか、
というのが、
とても重要な21世紀の課題な気がします。




バラケ・シソコさんのコラは、
シンプルな部屋のなかにある
無限の音楽の宇宙の広さを
僕たちに教えてくれているようでした。

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
ヒマラヤの湧き水の話、
感覚的にわかるような気がします。

ちょうど3年前からThe DUOを聞きはじめて、
ライブのあとはいままできいた
いろんなギターが頭でぐるぐるしてました。
感覚って不思議です、
聞いてすぐ、思い出せなくても
何年かしたらふわっと響いてきたり。
2年前、狛江で「未来の記憶」を聞いた時
頭に浮かんだ風景が忘れられなかったり。
去年はタンゴづいて、村治さん・インストアライブと
両方聞けてウハウハだったり。

とてもいい音を聞けるって、しあわせです、
時間なんか超えちゃってくれてます。



さばねこ
2013/05/25 17:54

コメントする help

ニックネーム
本 文
部屋のなかにも宇宙 ギタリスト 鈴木大介のブログ/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる