迷いこんだ厳しい世界

シンフォニエッタの行き帰りに、
南博さんの
「白鍵と黒鍵の間に-ピアニスト・エレジー銀座編-」(小学館)
を読み返していました。

普通一般に、銀座の高級なクラブなどで演奏しているミュージシャンは、
お店では「先生」と呼ばれています。
これは、南さんが3年間「先生」だったころの、
青春グラフィティーみたいな話なんですが、
おかしくもあり、ほろ苦くもあり、切実でもあり、
南さんのピアノみたいに深い味わいです。

僕が、「先生」という呼び方を知ったのは、
たしか大学を出てふらふらしていた時期に、
知り合いの知り合いがやはり銀座でお店をやっていて、
そこの「先生」がお休みの日に代わりにきてほしい、
って言われてギターを弾きにいった時です。

クラシックしか弾けない僕に、
矢継ぎ早にリクエストされるジャズのスタンダード、世界の名曲、歌謡曲。
その頃は、「リアル・ブック」とか、「1001」とか、
「赤本」なんて言う存在もまったく知らないので、
どうして良いかわからず、
戸惑っている僕をママさんが気づかってくれて、
「なんでも好きな曲でいいのよ」と言ってくれたけど、
なんだか、とってもお役に立てなかった気がして、
申し訳なかったです。。。。

その後、何度か、
「明日も『先生』がお休みなのよ・・・」って
誘ってもらったんですけど、
またまたご迷惑になっては、と、
確か、あまり行かなかったんじゃないかなぁ・・・・
いや、でも、お店の女性に何度かお会いして、
女優志願だって言う話を聞いた記憶とかがあるから、
数回は行かせてもらったのかな・・・・。。。

もともと僕は、
大学時代から仕事が欲しくて、
もう、これぞバブルのメッカ、ご本尊、て言う感じだった
ザ・ホテル・ヨコハマ(モントレになっちゃったらしいけど)のラウンジや、
池袋のメトロポリタンの地下のレストランでギター弾かせてもらったりしてました。

自分がクラシックで生活できるようになるなんて
思ってもいなかったし、
(ましてやサントリー・ホールで難解な現代芸術に頭を悩ませるなんて!!)
1000円でも2000円でも良いからお金を稼ぎたくて、
知人に紹介してもらった、歌謡界系のギターのマエストロから
仕事を卸してもらっていました。
あの世界は演奏の内容より、遅刻に厳しかったです、
って、あ、南さんの本にも同じ事かいてあったな・・・。

あと、一生懸命になって演奏が盛り上がりすぎて、
「これはきっと支配人さんとかが目を見張っているに違いない」
と、思ったら、全然喜んでなかった、ってことがあって、
それ以来、適度にお客さんが集中しないように弾く習慣がつきました。

でも、
厳しい世界だったけど、
みんな一様に優しかったような気がするなぁ。
かけだしで、仕事の仕方もわからない、
どうやったらお店の雰囲気が良くなるとか、
そんなこと意に介さずにがむしゃらに弾いてたのに、
みなさん、「最近どう?」って電話くださったり、
終わったあとご飯食べさせたり、
お小遣い、といって一万円包んでくれたり、
でも、なんだか、自分がやっていける世界ではない感じはあったです。
そこには
僕が上手く立ち回れない、別の世界の厳しさが満ちている感じでした。

今、僕がいる場所が、
そういう世界より甘い、とは思わないけれども、
少なくとも今直面している厳しさの方が、
自分にはあっている、つまり、耐えることが可能である、
そういう直感があって、
その後、クラシックを一生懸命にやりだしたのかもしれません。

いや、それにしても、
こういう体験から、南さんの本の内容は、
まったく知らない人よりは
僕にとって想像しやすいのかもしれないけど、
南さんのように、しっかりそこに根ざして、
役に立っていた経験のような、
濃密なものにくらべると、
僕のその頃の体験はほんとうにうわっつらな気がしてしまいます。

今、あの頃お世話になった人たちはどうしているのでしょうね・・・。








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この記事へのコメント

yask
2008年08月27日 10:05
いろんなご経験をなさっていらっしゃるのですね~。

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