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<<   作成日時 : 2014/08/11 09:53   >>

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キネマ楽園Y “Baroque”のミックスが終了。

今度の録音ではマイクを3ヶ所に立てたので、
それらのバランスを曲によって変えて、
音色に変化を付けてみました。

前々作の「セゴビアを讃えて」から、
ちょっと特殊なマイクの立て方を思いついたのですが、
それだけだと音が強く入りすぎてしまうこともあって、
繊細さや響きを求めるために、
数カ所にマイクを立てたのです。


今回は、バロック音楽、ということをテーマにしていますが、
ソルの「月光」や、レスピーギの「シチリアーナ」、
それに、「アルビノーニのアダージョ」として知られている
20世紀のギアゾットの作品も収録しました。

松尾俊介くんとのデュオではそのアルビノーニに加え、
バッハの「イタリア協奏曲」や、
ヴィヴァルディの有名な「マンドリン協奏曲」を収録。

「イタリア〜」の方は、稲垣さん、松本吉夫さんの編曲で、
ヴィヴァルディは自編。

これらの編曲も、完全なバロックのスタイルと、
ロマン派以降の現代的なアプローチの
ミックスと言えるスタイルで、
アルビノーニやレスピーギとバランスを保っています。

そういうことをライナーノートに書くつもりで、
まだ今ひとつアイデアがまとまっていないのだけれど、
今回重要だったのは

何が自分たちにとってのバロック音楽なのか

ということです。


例えば僕もそうですが、
皆さんの多くの方は、
「ゴールドベルグ協奏曲」を初めて聴いたのは
グレン・グールドの演奏によって、だと思います。

のみならず、
バッハ作品の演奏や解釈について、
グールドは多大な影響力を誇っています。

グレン・グールドの演奏は、一聴するとたいへん理知的ですが、
よくよく聞けば、ある種のマニエリスムに裏付けされた、
しかしながら同時に直感と主観によって導かれ、
錬磨することで様式美の後ろにロマンティシズムを覆い隠してしまうような
とても考え抜かれた現代的なスタイルなのです。

それらは、
アーノンクールやその教え子達が推奨していた
ピリオド楽器を通したアプローチとはまったく異なっています。

でも実際には
僕らは初めて接したもの、
にとても大きく影響されています。

松尾くんも「子供のころ、イ・ムジチの演奏のアルビノーニが
大好きだった」と語っていたのですが、

僕らのバロック音楽の初期体験の大半は、
グールドに代表されるような
ロマンティックであり、科学的でもある
モダン楽器の演奏によって、であったわけで、

しかも僕はギターという現代の楽器を通して
それらを表現する訳ですから、

古楽器的なアプローチとは明らかに
一線を画すものになってしかるべきなんです。



ザルツブルグで僕の師匠だったホアキン・クレルチは、
その少し前までアーノンクールに師事していたため、
BWV998なんかは、
ホアキンがアーノンクールと一緒に考えた運指、
というのがあって、
ギターでどのようにして古楽器的なアーティキュレーションを
実現するか、というお手本となっていました。

そのことに学んで、
ホアキンや友人のチェンバロ奏者達と、
BWV1006の解釈を考えて録音したのが95年。

それからの20年近くのあいだ、
ことあるごとにバッハやスカルラッティを中心とするバロック音楽への
アプローチを試みてきました。

ギターの世界は情報の少ないせいか、
はじめのうちは
テンポ・ルバートしただけで

「いまだにセゴビアみたいにロマンティックに弾いている」

という揶揄もたくさんされました。

ギターの世界ではつい最近まで、あるいは今でも、
かもしれませんが、

「バロック音楽は均質な音で厳格なインテンポを守って演奏する」

という、
およそバロック音楽の本質とは真反対の金科玉条が
厳粛に守られていました。


辛抱強く雪解けを待つように、
長い長い時間をかけて、
外堀を埋め(!?)、募る不安を払拭し(!?!?)、
ようやく自分のバロック音楽の演奏に、
ある程度の、ブレない芯、みたいなものを
見つけることができるようになったと思います。



そのようなわけで、
現代の音楽としての演奏と
古楽的なアプローチの統合されたスペースを見つけるのに、
とても長い時間がかかりました。

でも今では、今回の結果が自分を新しい表現領域へと
押し出してくれたことをとても嬉しく思っています。





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内 容 ニックネーム/日時
頑固者の勝ち〜?時代が追いついてきた
天空仙人
2014/08/11 20:27

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