ギタリスト 鈴木大介のブログ

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zoom RSS 憂鬱な王妃と、D.S.

<<   作成日時 : 2005/06/02 11:10   >>

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留学時代、就いていたエリオット・フィスクという先生は、
ドメニコ・スカルラッティのソナタに関する研究で有名な
ラルフ・カークパトリックの弟子でした。

スカルラッティのソナタは、
チェンバロのためのもので、
ギターのオリジナルではないのですが、
18世紀当時のスペインの宮廷音楽や大衆音楽のなかの
ギターの響きを意識して書かれている作品もたくさんあるので、
昔から随分たくさんの曲がギター用に編曲されて演奏されてきました。

レッスンにエリオットがまだ弾いたことのないソナタを
編曲して持っていって、お眼鏡にかなうと
とっても褒めてもらえたものです。
それには何日も図書館で500曲以上のソナタとにらめっこなんですけどね。
一方、他のギタリストが弾いていても、
明らかにエリオットの好みじゃないと、
「これは難しすぎてギターにはあわないよ」
といわれてしまいます。
だけど、パガニーニのヴァイオリンの為のカプリス全曲を
難なくギターで弾けてしまうエリオットには、
だいたいのものは弾けてしまうはずで、
多分単にお気に召さなかったのでしょう。


ドメニコ・スカルラッティのソナタは、
同じ年に生まれたバッハのような、敬虔な作品と違って、
人間的な喜怒哀楽を表現したものです。
一曲一曲は短いのですけれど、
そのなかに気まぐれな転調があったり、
目の覚めるような華やかなパッセージがあったり、
ナポリ人らしい歌心があったりします。

これらのソナタはすべて、
彼が仕えて音楽を教えていた
マリア・バルバラという、ポルトガル人で後に
スペイン王妃となった女性の為に書かれています。
今から考えるよりも、ずっと当時の宮廷生活は
とくに女性にとっては窮屈なものだったようですから、
スカルラッティは音楽を通じて生きていく素晴らしさを
王妃に見つけてほしかったのでしょう。

教師としてだけではなく、
父として、兄として、そして多分心に秘めた恋人としての
まなざしが感じられるような気がします。
大げさにいうとそれらは500通以上のラヴ・レターなのかもしれません。

憂鬱な王妃に、
有名な作曲家だった父アレッサンドロの影響で
小さい頃から音楽に親しみ、
ナポリからリスボンへと旅をした世俗人の音楽家が、
世の中にはこんなに楽しいこともあるんだよ、
と教えている姿は、
けっこうありがちだけど、とってもドラマティックですよね。

僕が好きなスカルラッティの演奏は、
カークパトリックやエリオットをはじめ、
ピノック、ギルバート、中野振一郎さん、ピエール・アンタイ、
ポゴレリチ、ホロヴィッツ…もう数えきれないくらいたくさんたくさんありますが、
なかでも特にお気に入りは、
テオドロ・アンゼロッティという、
ベリオのセクエンツァなども初演している超絶技巧のアコーディオン奏者がいて、
この人のスカルラッティのソナタ集です。
アコーディオンだと、もちろんバロック時代にはなかった訳ですけれど、
コンチェルティーノで弾いてるようで、
街の喧噪や人々のざわめきが聴こえてくるみたいな気がします。


僕も随分久しぶりに今ソナタを数曲まとめて弾こうと思って準備していますが、
(10年前、デビューリサイタルで6曲弾いて以来かも)
スパニッシュ・フュージョンみたいな、ポップなスカルラッティにしたいです。
イニシャル一緒だし。関係ないか。

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
はじめまして、おじゃまします。
いつも「気まクラ」楽しく聴かせてもらっています。
「気まクラ」を聴き始めてから買った大介さんの「武満徹集成」と「月の光」は今では私の大の愛聴盤になりました。

関係者の方しかコメント、TBできないのかもしれなくて不安ですが、もし、おじゃまでしたら、削除して下さい。

大介さんのスカルラッティのCDはまだなかったと思うのですが、いつか、ぜひ聴いてみたいと思っています。

録音かコンサートの機会があることを楽しみにしております。
wolfgang_a
2005/06/02 23:56
と、書いてしまってから、気付きましたが、今度の Hakuju Hall で弾いてくださるんですね!

遠隔地に住んでいるので、コンサートには行けそうにないですが、ぜひ、いつかCDにして下さい!
wolfgang_a
2005/06/03 00:03
どうぞ、いつでもコメントなさってください。
アコーディオンのバロックは、御喜美江さんのラモーの演奏も楽しいですよ。あと、フッソングさんのバッハも。
daisuke
2005/06/03 08:52

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